「サッポロ極ゼロ裁判」に学ぶ酒税法

ライター 藤原 みさえ

2020/06/30

今回はサッポロビールが国税当局を相手に、自主納付していた酒税約115億円の返還を求めて裁判を起こした件(「サッポロ極ゼロ裁判」)に注目して、その裁判のきっかけと経緯や判決理由について触れながら、この裁判に繋がった「酒税法」についてお届けします。

「サッポロ極ゼロ裁判」の概要

■「サッポロ極ゼロ裁判」の東京高裁判決
最初に「サッポロ極ゼロ裁判」の東京高裁判決についてみてみましょう。

2020年2月12日に「サッポロビールのビール系飲料『サッポロ 極ZERO』が、はたして、税率の低い『第三のビール』に該当するのか否か?」という点をめぐって争われた訴訟の控訴審判決が東京高裁で下されました。

東京高裁は「『サッポロ 極ZERO』は『第三のビール』には当たらない」とした1審の東京地裁判決を支持し、サッポロ側の控訴を棄却する判決を下しました。

■裁判のきっかけと経緯
そもそもこの裁判はどのようなきっかけで始まったのでしょうか。時計の針を2013年に戻してみましょう。

今回の裁判の対象となった「サッポロ 極ZERO」は、サッポロビールが2013年6月に「世界初の製法」をうたい「第三のビール」として販売を開始した商品です。この商品は、価格の安さと健康志向で消費者の心をつかむことに成功し注目を集めました。

ところが、サッポロビールは、2014年に国税当局から、「第三のビールに該当しない可能性」や「酒税法上の発泡酒に当たる可能性」の指摘を受けます。

この指摘を受けて、サッポロビールは「サッポロ 極ZERO」を「第三のビール」から製法を見直して「発泡酒」に切り替えて再販売するとともに、差額分の酒税約115億を自主納付しました。

しかし、その後、サッポロビール社内で製法を検証して「サッポロ 極ZERO」は「第三のビール」に該当するとの確証を得た調査結果をまとめ、自主納付分の酒税返還を求める訴えを起こしたのです。その結果、上記のとおり、東京高裁はこの訴えを退ける判決を下しました。

この結果を受け、国税庁は「妥当な判決」とコメントしましたが、サッポロ側は判決を不服として最高裁判所に上告受理申立てを行いました(2020年2月21日時点)。

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判決の理由と今後の酒税法改正の動き

■判決の理由
では、東京高裁の判決の理由はどのようなものだったのでしょうか。

2020年2月12日の産経新聞(※1)は、「第三のビールは、酒税法で発泡酒にスピリッツを加えたものなどと規定している」と言及した上で、東京高裁は「発泡酒の要件を『全ての原料が入った状態で発酵がみられる』ことと指摘」し、「スピリッツを入れる前の極ゼロの発泡酒には発酵が認められず、第三のビールに該当しないと認定した」と報道しています。

※1:産経新聞2020年2月12日「極ゼロ、2審も『第3のビール当たらず』東京高裁、サッポロ側の控訴棄却」参照
https://www.sankei.com/affairs/news/200212/afr2002120019-n1.html

この記事から、「原材料の割合」は「第三のビール」に該当していても、スピリッツを入れる前の「サッポロ 極ZERO」の発泡酒には、発酵が認められないために「第三のビール」に該当しないとの判決が下されたことが推測されます。「第三のビール」の定義があいまいなために、発生してしまった問題と言えるかもしれません。

■今後の酒税法改正の動きに注目
今回の記事では、「サッポロ 極ZERO」を巡る裁判に焦点を当てて、この裁判に繋がった「酒税法」の問題にも触れながらみてきました。

こうした問題について、今後、注目すべき動きがあります。2018年に酒税法等の改正がなされ、2026年10月1日より「第三のビール」、発泡酒を含むビール類の税率は一本化されることとなりました。それに先立ち2023年10月1日より「第三のビール」という区分が廃止され、発泡酒に統合されることとなりました。(※2)

※2:国税庁ホームページ「酒税法等の改正のあらまし」参照
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/kaisei/aramashi2017/index.pdf

このようにビール系飲料の税率は、2026年までに段階的に改正されていきますので、今後のビール系飲料の動向にも着目しながら、自身に合うお酒を選んで楽しく飲んでいきたいものです。

 

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