戦時下の「税制」って?

ライター 藤原 みさえ

2020/06/23

昨今のコロナ禍に際した経済対策は「戦時の救済対策」とも言われています。それでは戦時下(昭和10年代)の税制は実際、どのようなものだったのでしょうか? この記事では、戦時下の税制についてご紹介していきます。一緒に、当時の税制を覗いてみませんか?

戦時税制って!?

戦時下の税制について、国税庁の「戦時税制」のホームページを参考に、戦時下の税制改正のポイントを以下3点に整理してご紹介します(※1)。

最初のポイントは、戦時経済体制への移行にともなう財政の拡大に対応するため、昭和13年に支那事変特別税法が施行され、同法により物品税が課税されるようになった点です。

第2のポイントは、昭和15年に、国と地方を通じた負担の均衡、経済政策との調和、弾力性ある税制の確立、税制の簡易化を目標にした税制改正が行われ、所得税は、分類所得税と総合所得税の二本立てとなり、また、法人所得税は、法人資本税と統合され法人税となった点です。

そして、第3のポイントは、間接税については、酒類に関する税法が酒税法に一本化され、造石税と庫出税が併用されるなど、大きな改正が行われた点です。

これらを眺めると、当時は国家税制として、綜合所得税、分類所得税、法人税の3種類のほかに、物品税、造石税、庫出税などがあったことがわかります。

それでは、これらの税制は、どんな内容で、どれくらいの税率だったのでしょうか? この点について、当時の所得税と物品税に焦点を当てて、以下で少し詳しくみていきます。

※1:国税庁ホームページ「戦時税制」を参照
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/shiryou/library/15.htm

■戦時下の所得税って!?
戦時下の所得税は、昭和15年に分類所得税と総合所得税の二本立てとなりました。この2つの税制のポイントについて、関野満夫氏の研究を参考に、その2点のポイントをまとめてご紹介します(※2)。

最初の分類所得税については、①不動産、②配当利子、③事業、④勤労、⑤山林、⑥退職の6種に分類され、各々に応じて異なった税率が適用されていました。その税率について、例えば、①~④についてみてみますと、①と②の不動産所得や配当利子所得は10%(ただし国債利子所得は4%)、③の商工業等の事業所得は8.5%、③の農業(農家)の事業所得は7.5%、④の勤労所得は6%という比例税率でした。

一方の総合所得税は、個人(世帯)の各分類所得を合計した総合所得が課税対象となり、基礎控除額は5,000円であり、税率は10~65%超過累進税率でした(昭和15年度)。原則として前年度所得に対して賦課課税されていました。

これらを眺めると、当時は、分類所得税として6種類の分類がなされ、綜合所得税として10%~65%の超過累進税率が適用されていたことが見受けられます。

※2:関野満夫(2017)「日本の戦時財政と所得課税」『経済学論纂(中央大学)』)第57巻第3・4合併号の272~273ページを参照。

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戦時下の物品税って!?

戦時下の物品税は、昭和13年に1年限りで導入されましたが、それ以降恒久化されました。この物品税について、関野満夫氏の研究を参考に、①課税対象、②贅沢品への課税内容、③税率の推移という3点に焦点を当ててご紹介します(※3)。

まず、物品税の課税対象について、第1種(服飾品や生活用品が中心)、第2種(工業製品・電気製品が中心)、第3種(マッチ、飴、ブドウ糖、麦芽糖,酒類など)があり、第1種と第2種は従価税、第3種は従量税でした。

つぎに、贅沢品への課税内容について、第1種と第2種ともに、甲類、乙類などの分類がなされました。例えば、第1種の甲類としては、宝石、べっ甲製品、毛皮・羽毛製品が、乙類としては時計、帽子、杖、履物、鞄などがありました。また、第2種の甲類としては、写真機、フィルム、蓄音機、レコード、乗用自動車、化粧品などが、乙類としては、ラジオ、扇風機、冷蔵器、嗜好飲料などがありました。

そして、物品税の税率の推移について、昭和13年度には従価税の第1種・第2種では、甲類15%、乙類10%で、第3種(マッチ)は従量税で5銭(千本当り)でしたが、その後は持続的に増税されて、昭和19年度税率は甲類120%、乙類60%となり、マッチも15銭(千本あたり・昭和18年度)となりました。

これらを眺めると、当初1年限りで導入された物品税はその後恒久化され、その後は税率の増加が進み、昭和19年には甲類の税率が120%、乙類の税率は60%にまで上昇していったことがうかがえます。

※3:関野満夫(2017)「日本の戦時財政と消費課税─売上税を欠いた消費課税の大増税─」『経済学論纂(中央大学)』)第58巻第1号の35ページを参照。

■歴史的な視点も時には必要
今回の記事では、時代を遡って、戦時下の税制について、特に戦時下の所得税と物品税に焦点を当ててみてきました。昨今のコロナ禍への税制を含めた救済対策についてさまざまな検討がなされている中で、withコロナあるいはアフターコロナ時代の私たちの今後の税制のあり方を考える際には、こうした歴史的な視点も加えて検討していくことも大事なのではないかと思います。今回の記事がこうした検討の際の一助となれば幸いです。

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