AI時代の税理士の生き方(第4回)

株式会社タイムコンサルティング
代表取締役・税理士 
井ノ上 陽一

2020/04/28

本連載『AI時代の税理士の生き方』では、「AIが税理士から仕事を奪う」と言われる中、税理士はどう考え、どう動いていくかについて、お届けします。 第1回:AIとは、第2回:AIで税理士業がどう変わるか、第3回:AI時代の効率化、第4回:AI時代に向けて今やるべきこと、という構成です。

第4回 AI時代に向けて今やるべきこと

『AI時代の税理士の生き方』連載の第4回は、AI時代に向けて今やるべきことについてまとめてみました。

■新しいことを試す

AI時代にむけてやっておきたいことの1つ目は、新しいことを試すことです。
自分がやったことがないことを試すには勇気がいりますが、今後欠かせないことです。
ミスが怖いかもしれませんが、ミスを恐れずに試していきましょう。
税理士は、ミスをしてはいけない仕事ですが、ミスを過度に恐れていると、これからの時代、変化に対応できません。
(税額は間違えてはいけないでしょうが)

AIがITも含めて進化していくことは確実ですので、それに対応していく必要があります。
変化に対応できなければ文字通りAIに仕事を奪われてしまうでしょう。

新しいことを試すということに慣れておくことが大事です。
私は毎日新しいことをやる1日1新というものを続けています。
食べるものや買うもの、日々のちょっとしたことでも何でもいいので、新しいことを毎日やるということです。
そういうことに慣れておくと新しいものが出てきても、どんなものかワクワクしますし、試すことができます。
新しいことを試す中で、ミスもあり、失敗もありますが、日々のそのミスや失敗を重ねることで、ミスを恐れず新しいことを試す自分をつくることができるのです。

仕事に日々追われているとそういったことを試す暇もなく、何よりも試す気力もなくなってしまいます。
AIにも恐れを抱くだけになってしまうでしょう。

ふと気づくと自分の仕事がなくなっているという状況にもなり得ます。
そうならないように新しいことを試す力を鍛錬しておきたいものです。

新しいことを毎日試すのは、何よりも自分が楽しめます。

■個性を出す

AIが高度に進化した場合、人間以上の成果を発揮する必要があります。

人(税理士)に頼むよりAIに頼んだ方が安くて速くて正確となる可能性もあるわけです。
そんな中仕事を依頼していただくには、AIにはできないこと、人ならではのことをやるしかありません。

さらには、AIよりも得意なことがあります。
それは、個性です。

たとえば、髪を切ってもらうときにその人の腕だけで決めているわけではないでしょう。
どんな話をするか、どういった顔をしているか、自分のことをどれだけ考えてくれるかなどといった判断要素があるはずです。

どんなにおいしい店でも、店員さんの印象がよくなければ、評価は下がるでしょう。

人とAIから選ぶ、または人の中から人を選ぶということになると、そういった判断要素がありえます。
(もちろんドライに、個性など関係なしに判断する基準もあるでしょうが)
個性を出しておくことは無駄ではありません。

AIが高度に進化しなくても、大手の税理士法人もありますし歴史のある税理士事務所もあり、高名な税理士もいる中で、選んでいただければいけないわけです。

規模や歴史では到底勝てません。

選んでいただける可能性があるのは個性であり、「税理士の〇〇先生にお願いしたい」というのではなく「〇〇さん」にお願いしたいと思われることを目指しましょう。
だからこそ、個性をネット上で出すことをオススメしています。
特に、自分の思考や行動を、ある程度の量の文章で表現するブログがおすすめです。

皆に好かれようとしていては、周りと違いを出せません。
自分、そして他の税理士と何が違うかを出して、後の判断はお客様に任せるくらいが、違いをつくるには、ちょうどいいのです。

AI時代でも、違いをつくる必要があるのは変わりませんし、人としての個性を磨いておき、出しておくことは欠かせません。

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どんな生き方をしたいか

AIが仕事を奪うといわれる中、「じゃあ、どんな仕事が残るか」と考えがちです。
その残る仕事をやっていくのが、AI時代でも有効ではあるでしょう。

しかしながら、その残る仕事は、本当に自分がやりたいことかどうか。

その仕事をやることに人生をかけることができるかどうかは、また別の話です。

たとえばAIができない仕事として税務調査対応があるでしょう。
この税務調査対応だけが残るとして、自分がそれだけをやるかどうか。

税務調査対応をやりたいのであればそれでいいかもしれませんが、そうでなければ別の仕事をつくらなければいけません。
AIができる・できないに関わらず、自分がやりたい仕事を残していくように、今の段階からしていきたいものです。

私はたとえAIが節税策や資金繰りを的確に提案できるようになったとしても、私自身がやりたい仕事ではあるので続けるつもりではいます。

もちろんそこで選ばれるためにはそれなりの努力が必要ではあるでしょうが、自分が残したい仕事というのを意識するのは大事だと思うのです。

また、AIが文章を書けるようになっても、文章を自分で書きたいですし、そこで選ばれるようにしたいものです。
AIが、セミナーを開催できるようになったとしても、自分でセミナーをしていきたいと考えています。

どんな仕事をやるかは、どんな生き方をしたいかにもつながるものです。
「税理士はAIに仕事を奪われる」
「税理士なんて今後食べていけない」
「独立なんて今からやっても無駄」
などと、周りからなんといわれようと、自分がどんな生き方をしたいかは守っていきましょう。
それが独立してからの権利であり、義務でもあります。
自分の生き方を守るために独立したはずですから。

どんな生き方をしたいかは、AI時代にも大事なことです。

自分がやりたい仕事をAIもやるのであれば、AIと共存して行く生き方も当然あります。
AIは決して敵ではなく、味方でもあるものなのです。

だからこそ私は「AIに負けないように」という言葉を使いませんし、使ったことはありません。
AIと共存し、よりよい税理士業をやっていこうと考えています。

AIを敵対視せずに、お互い刺激しつつ努力しつつ共に歩んでいく好敵手(ライバル)と考えておきましょう。
税理士同士がそうであるように。

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