経営戦略のための知財 Vol.2

特許業務法人 浅村特許事務所 会長 
金井 建

2020/05/21

M&A、経営戦略、融資判断などで知的財産の占める割合が高まる中、その経済的価値を把握することは企業にとって必須です。そこで、業務に最適な知的財産価値評価サービスを提供している浅村特許事務所の金井建先生が、経営に役立つ知財の活用法について解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.79(2020.5)に掲載されたものです。

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Vol.2 知的財産とは②

前回は、知的財産の重要性について、また、知的財産の位置づけについて説明をしました(図1)。

図1:知的財産と知的資産の関係のイメージ図

 

「のれん」と無形資産との関係
ところで、M&Aにおけるいわゆる「のれん」と無形資産との関係はどうなっているのでしょうか?

のれんは無形資産の財産的価値の総称ということができ、買取側企業の評価(所得価格)で決まるものです。具体的には、売り手側企業の純資産と買取側企業の買取金額(取得価格)との差額となります(図2)。

図2:M&Aにおける「のれん」

 

売り手側企業としては、のれん分の額(無形資産の総額)を純資産に加えて買い取ってもらうことができるという意味で、重要になります。また、買取側企業としては、売り手側企業ののれん(無形資産)を購入という形で得ることができるというメリットがあります。

日本の会計基準では時間の経過によって資産価値が目減りするとの考えから、のれんを単体の場合には、5年以内で定期償却することになります。一方、近年採用が増えている国際会計基準(国際財務報告基準=IFRS)では、のれんの償却は実行されません。特別損益の概念がないためです。のれん(無形資産)に相当する損益は最終利益ではなく営業利益の段階で反映しなければならないことに注意が必要です。

またIFRSでは、のれんをすべて計上することはできず、固定資産等への振り替えが必要になりますので、その点も注意する必要があります。

知財価値を算出する手法
知的財産権であれば、その価値を金額で評価することができます。

この知財価値評価には大きくインカムアプローチ法とコストアプローチ法の2つの方法があります。通常は、インカムアプローチ法を採用し、この方法が採用できない場合に、コストアプローチ法を採用することが多いようです。

インカムアプローチ法は、将来得られる想定キャッシュフローを現在の価値に割り引く、いわゆるDCF 法を用い、知的財産権を所有することによりこの知的財産権のロイヤリティ(特許実施料や商標使用料など)の支払いが免除されるとの考えを利用するものです。仮に知的財産権を保有していない場合に、その知的財産を実施等する際に支払わなければならないロイヤリティ(ライセンス料)をその知的財産権の金銭的価値として評価する手法が主流です。

知的財産権の事業における貢献度を個別に推測する必要がなく、特許だけでなく、ブランドや商標の価値評価にも応用することができるのもメリットです。

通常、知財価値評価を行うためには、技術内容が分かっており、知財価値評価手法や経理的知識をある程度有している専門の特許事務所に依頼する必要があります。

*本連載は、毎月第3木曜日に更新を予定しております。

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