契約書のポイント
~会社と税理士の顧問契約~<第1回>

鳥飼総合法律事務所 弁護士 
佐藤香織

2020/05/28



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第1回 契約書はなぜ作る?

1 本コラムのターゲット
今回は、「契約書のポイント~会社と税理士の顧問契約~」のコラムの第1回です。

このコラムでは、税理士の先生方が、クライアントである会社との間で「顧問契約」を結ぶときに作成する「契約書」について、数回にわたってポイントをお話していきます。私は弁護士という立場で、様々な取引や契約書を見ています。そうすると、後々揉めそうなところや、税理士の責任が問われそうなところはどこか、ということが分かってきます。

税理士は、税務の専門家であり、専門家責任を負います。例えば、税理士が業務でミスをして、クライアントに税金に関する損害が発生してしまうと、税理士がクライアントから損害賠償を請求されることもあります。これが、「税賠」と言われるものです。

税賠の原因はいろいろですが、クライアントと税理士との間の契約書の内容が、大きな原因となっていることもあります。

ここまでくると、このコラムは、税理士の先生方や会計事務所で働く方をターゲットにしていると思うかもしれません。

でも、「契約」や「契約書」に関係する方々や、興味のある方々も、大歓迎です。皆さんもご存知かもしれませんが、民法の債権法の部分が改正されて、2020年4月から変わりました。「債権法」とは、民法の契約等に関する部分のことです。そうすると、これからの契約書は、基本的に新しい民法を踏まえて作ることになります。また、すでに作った契約書も、新しい民法に合わせて見直しが必要かもしれません。このコラムは、そういうところもできるだけ触れていきます。

2 契約書を作る理由
ではなぜ、契約書を作るのでしょう?思いつく理由を上げてみると、こんな感じでしょうか。

✓ トラブル回避のため
✓ “言った言わない”の争いを避けるため
✓ 証拠として残すため
✓ 何を約束したのかを明確にするため
✓ 支払の金額や報酬を決めておくため
✓ 上司に作れと言われたから etc.

さて、どれも契約書を作る目的としてはアリなのですが、その目的は、契約書を作れば100%達成できるでしょうか?

例えば、「“言った言わない”の争いを避ける」ということを目的として、契約書を作ったとしましょう。ところが、契約書を作っても、争いは起きるときには起きてしまいます。このことは、契約書があるのにもかかわらず、揉めてしまった経験のある方なら、ますます実感できますね。

では、契約書を作っても、目的が果たせないのはなぜでしょう?

例えば、次のような契約書だったら、目的は果たせないかもしれません。

× 契約書に書くべき内容が足りなかった
× 契約書は慎重に作ったつもりだったが、想定外のことが起きて契約書では対応しきれなくなった
× 契約書のある言葉の意味や、ある文章の解釈について、当事者の認識にズレがあったことが、後で発覚した

では、どうせ争いになるかもしれないなら、契約書なんて作っても無駄なのでしょうか。

それは違います。契約書にはメリットもたくさんあります。

契約書を作る過程で、当事者が取引の具体的な内容や要望を整理することができます。疑問点や要望などを前もって話し合って、それを契約書に入れることもできます。何か問題が起きたら、契約書を基に解決することも可能です。契約を締結した当時の担当者が変わって別の担当者になっても、契約書を見ればどういう契約だったかが確認できます。

このように、契約の当事者を守ってくれる契約書を作るのが大切なのです。

*本連載は、毎月第4木曜日に更新を予定しております。

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