契約書のポイント
~会社と税理士の顧問契約~<第3回>

鳥飼総合法律事務所 弁護士 
佐藤香織

2020/07/23



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第3回 契約書のタイトルと構成

1 タイトルの役割
いよいよ今回から、顧問契約書の作り方に入ります。
まずは、「第1条」といった条文の前、つまり、契約書の最初の部分を見てみましょう。
契約書の最初には、「タイトル」(表題、題名)が書かれていることが通常です。契約書の一番初めに書かれている、「売買契約書」や「賃貸借契約書」などがそうです。

この契約書のタイトルについて、あまり気にしたことはないかもしれません。それもそのはず、「〇〇という内容の契約書の場合、タイトルを『〇〇契約書』とすること」といった法律の定めはありませんし、そもそも、契約書にタイトルをつけるかつけないかも自由だからです。

ではなぜ、契約書にはタイトルがついているのでしょうか。

「タイトルがついているのが契約書の一般的な形だから」というのも間違いではありません。ただ、私は、タイトルをつける一番の意味は、「その契約書のタイトルを見た人が、何について定めた契約書なのか一目でわかるように」というところにあると思います。

ですから、タイトルは、契約書の最初の目立つところに書くのです。最初に目に入るので、言ってみれば、契約書の第一印象がこれで決まるということになります。

会社と税理士との間の顧問契約書であれば、タイトルは、「委任契約書」や「税理士業務委託契約書」が適切です。ストレートに「顧問契約書」とすることもあるでしょう。もちろん、タイトルはこれらに限りません。契約の内容にふさわしいタイトルをつけて、わかりやすくしましょう。

ただし、タイトルだけでその契約書の内容が決まるのではありません。タイトルはあくまでも契約書の内容を端的に表すものであり、より重要なのは、それに続く条文、すなわち、契約の具体的な内容の方です。

2 契約書の条文の順番にルールはある?
顧問契約書は、第1条から最後の条まで、どういう順番で何を書くのでしょうか。例えば、次のような構成の顧問契約書があるとします。

第1条 業務の範囲
第2条 契約期間
第3条 報酬とその支払
第4条 資料などの提供と秘密保持
第5条 情報の開示と説明
第6条 設備投資などの報告
第7条 免責
第8条 解除
第9条 協議

「あれ?うちの事務所の契約書の条文は、こういう順番になっていないな」と思った方もおられるかもしれません。あるいは、「うちの契約書にはこの条文は入っていない」とか、「うちは20条くらいまであるぞ」などの感想もありそうです。また、特定のクライアントの契約書だけ、定型の契約書とは変えているということもあるでしょう。

このように、顧問契約書には、どういう条文をどういう順番で入れなければならない、という構成の決まりはありません。また、クライアントによって必要な条文の内容が異なることももちろんあります。ですから、いろいろな構成の契約書があるのは当たり前なのです。

ただし、実務では、同じような順番で条文を並べた契約書が多いことは事実です。これは、最初から読んでいくときの読みやすさ・わかりやすさなどの実務の集積によるものと言えます。

一から契約書を作るとき、どこかから手に入れた契約書のひな型を使ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。契約書のひな型には、典型的な契約書を手軽に作れるというメリットがあります。しかし、ひな型をよく検討もせずにそのまま使って契約書を作ると、問題が起きた時に役に立たなかったということにもなりかねません。これでは、メリットよりデメリットが大きくなってしまいます。

「ひな型」は「たたき台」としての役割であることを忘れず、当事者間の具体的な取引にあわせてカスタマイズしていき、法律にも取引の実態にもあった契約書を作りあげていく、という作業が、契約書の作成には必須なのです。

*本連載は、毎月第4木曜日に更新を予定しております。

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