税理士のヒヤリ・ハット体験談〈第2回〉

税理士法人古田土会計 社員税理士 
土田 大輝

2020/05/22

2020年4月より始まった当コラム。経済情勢が不安定な中、少しでも実のある内容の情報をお伝えしたいと思います。このコラムのお題は「税理士業務をしている中でのヒヤリ・ハット」の共有。なかなか痛いところを探るテーマです。私は税理士法人の社員税理士として税理士業務をさせていただいているので、最終的には『代表の承認』で決定となりますが、その判断材料を代表に提供することが、ヒヤリ・ハット回避のため肝要と考えています。

本連載のまとめは こちら

第2回 「この領収書、経費で落とせるかな?」 交際費か? それとも…??

今回も、「税理士業務をしている中でのヒヤリ・ハット」について、エピソードを交えてお伝えしたいと思います。

【エピソード】
飲食店の領収書が1枚
社⾧は経費にしたいそうですが……

「この飲食店の領収書、経費で落とせるかな?」

我々が社⾧と会話をしていると、よく受けるご質問です。税務の目線で見れば、その支出が法人の事業に関連するものであるか、税法用語でいえば、『損金』となるかが問われます。

居酒屋等であれば、「誰かを接待されたのですか?」
カフェ等であれば、「打合せですか?」「どのような内容でしたか?」

税務では、その支出の目的と内容などを総合的に判断され、損金計上の可否が判断されます。ひと昔前は、交際費となった場合、1事業年度あたりの支出額が少額であっても、税務上の所得加算がありました。つまり交際費に対して追加の税額がありました。それが平成25年度改正で、資本金1億円以下等の中小法人の場合、現在は1事業年度あたり800万円までは交際費となっても全額損金となり、加算されません。そんな背景があることから、「どうせ交際費になっても税金が発生することはない」等と、交際費に対する意識が薄くなっている傾向にあるなと感じます。

しかし、それが給与と認定されるなど、調査で修正をするケースがあります。いくつかその可能性を探ります。

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給与とされる場合
その飲食の費用が、社⾧や特定の人の給与とされるケースがあります。給与とされた場合は、個人としては所得税が発生し、支出した法人は、相手が社員であれば損金ですが、役員であれば損金となりません。個人・法人のダブル課税になります。

このポイントはいくつかありますが、その飲食が事業遂行上必要か? が調査でよく見られます。不要(個人的飲食)であれば、税務上は給与となります。もってのほかです。また会社としては、個人的な飲食であれば会社に損害を与えたこととなるので、給与でなく貸付金として、会社に返金してもらうべきです。

会議費? 福利厚生費? 交際費?
会議費・福利厚生費・交際費、いずれでも、事業遂行上必要な費用であれば、当然会計上は落とせます。ただ、税務上交際費については、上記の通り800万円を超える場合に課税されます。

■ 会議費
会議、商談、打合せのため社内や通常会議を行う場所での飲食(軽食程度)会議のメンバー・打合せの内容等、その会議等の実体を記録として残すことが、後のトラブルにならないポイントです。議事録兼費用精算書を作成し、それに領収書を添付して保管するなど、工夫しましょう。

■ 福利厚生費
全従業員等、特定の人に偏らない慰安を目的とした、社会通念上相当な金額での飲食人数・繁閑等の観点で、部署ごとで開催することもかまいません。こちらも報告書を作成して、参加者を明らかにしておくといいでしょう。よくあるケースで、社⾧が特定の社員と飲み会を開き、福利厚生費として会計処理することがあります。これは社員に対する交際費となるため、気をつけなければなりません。また前にも書いたように、個人的な飲食の場合は、会社としては貸付金として返金してもらいましょう。

■ 交際費:得意先等の接待のための飲食
税法上の交際費の範囲は広く、相手の歓心を買う行為であれば、交際費を検討する必要があります。なお、接待による飲食代は、領収書があればよいというものではありません。この領収書や帳簿に接待する相手方の会社名・氏名を明確に記録しておかないと、費途不明金として税務上否認されます。

いま、足元の経済が落ち込んでいる中で、また不要不急の外出を避けるなど在宅中心となっていく環境下で、消費に大きな変化が起こっています。『経費』に関する考え方が変わっていくのではないかと感じています。例えば、参加者が各々在宅でWebカメラを使い、オンラインで飲み会を開くことがあるようです。いわゆる『三密』を防ぐことができるだけでなく、参加者全員と話すことができるなど、通常の飲み会スタイルでは得られないメリットもあるようです。では、従業員の慰安を目的として会社でオンライン飲み会を企画して、その飲食費用を会社が負担した場合の税務処理はどうでしょう。形式としては家でお酒を飲んでいるのですが、仕事の延⾧ですから、基本的には損金(福利厚生費)となるだろうと考えます。

今回は、飲食店の領収書1 枚から、交際費と周辺費用と呼ばれるものについて考えてきました。書いていて、とても奥が深い項目だと感じています。それもそのはず。税法が実体経済の変化に対応していくため、「確実な正解を示している」とも言い難いからこそだと思います。税法の奥深さとともに、その面白さも伝わればなによりです。

*本連載は、毎月第4金曜日に更新を予定しております。

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