税理士のヒヤリ・ハット体験談〈第3回〉

税理士法人古田土会計 社員税理士 
土田 大輝

2020/06/26

2020年4月より始まった当コラム。経済情勢が不安定な中、少しでも実のある内容の情報をお伝えしたいと思います。このコラムのお題は「税理士業務をしている中でのヒヤリ・ハット」の共有。なかなか痛いところを探るテーマです。私は税理士法人の社員税理士として税理士業務をさせていただいているので、最終的には『代表の承認』で決定となりますが、その判断材料を代表に提供することが、ヒヤリ・ハット回避のため肝要と考えています。

本連載のまとめは こちら

第3回 ヒヤリ・ハットの大本命!? 消費税は恐ろしい

今回は、ヒヤリ・ハットの代表格大本命!?ともいえるテーマ『消費税』について、お伝えします。

消費税は、私たちの生活にとても身近な税金です。しかし、実は我々会計事務所の人間にとっては、恐ろしい税法の筆頭に挙げられます。

なお今回、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者の方に対して、この消費税の取扱いに特別措置が設けられました。その内容も一部解説します。

【エピソード】
「近々、設備投資を考えている」に寄り添いましょう!

まず、消費税の概要から、一緒に見ていきましょう。

■ 消費税の制度概要
消費税は、モノやサービスの『消費』に対して課される税金で、事業者が売上等で預かった消費税から、仕入等で支払った消費税を差し引いて、その差分を納税します。事業者において設備投資などで支払った消費税が多額になり、預かった消費税を上回る場合は、その差分は還付請求することができます。

■ 納税義務者と免税事業者
すべての事業者に納税義務があるわけでなく、その基準期間(原則2年前)の年間売上が1000万円以下の事業者などについては、納税義務は免除されています。

免除されている事業者については、納税の必要がないのですが、前記の還付も受けることはできません。

■ 課税事業者の選択 ~通常の場合~
還付を受けたいために、納税義務が免除される事業者においても、課税事業者(納税義務者)を選択することができます。選択のためには、その還付を受けたい事業年度開始日より前に、税務署に届出をする必要があります。
また、一度選択をしたら、原則として2年間納税義務が課されます

このように課税事業者の選択制度は、事後的に選択や選択替えをすることはできません。よって計画外のことが起こったり、計画そのものが見当違いだったため納税が多くなるなど、ミスが絶えません。

このタイトルでも書きましたが、お客様からの設備投資の情報を、我々は敏感にキャッチしなくてはいけません。スタートアップしたばかりで売上はこれからというお客様などが、まさに「先行投資」を考えている場合、この課税事業者の選択により、設備投資で支払った消費税の一部を、還付請求することができるかもしれません。お客様との情報交換を密にとり、課税事業者の選択漏れなど、誤ることのないように注意しましょう。

■ 今回、コロナ対策の特別措置が設けられました
 ~消費税の課税選択の変更に係る特例について~
昨今の新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者について、この課税事業者の選択を受けるための届出について、特別措置が施されました。
所定の要件(フローチャート参照)を満たす場合に限り、以下の取扱いが可能です。

事業年度開始日以後についても、課税事業者の選択の届出を行い、課税事業者になることができる。(還付を受けたい場合)
・課税事業者の選択届出を既に提出し、課税事業者になっている事業者においても、事業年度開始日以後でも免税になることができる。(納付を避けたい場合)

さらに、2年縛りはありません。翌期から元に戻ることもできます。

具体的なイメージは、こちらです(一例)↓
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免税事業者が課税事業者を選択した方が有利な場合
 売上規模は年1,000万円以下(2年前)。
 消費税は免税。
 コロナで売上が急減し、食材の廃棄が多く、仕入過多となる。
 仕入れが売上に対して多く、課税事業者になれば還付請求ができる場合。

課税事業者選択をしていたが、免税に戻った方が有利な場合
 売上規模は年1,000万円以下(2年前)。
 本来消費税は免税だが、設備投資を予定していたため、還付が見込めることから課税事業者の選択をしていた。しかしコロナの影響で投資計画を見直し、投資は行わなかった。
 このままでは、消費税が納税となってしまう。
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消費税の課税事業者の選択検討は、本来数期間の事業計画を検討し、決定する必要がありますが、こと今回の特例の要件に該当する場合においては、(事後提出可能・2年縛りなしとなるため)積極的に課税・免税の再選択をしていただきたいと思います。

最終的には、どちらが有利なのかを判定するお手伝いをするのは、我々税理士です。

お客様の大切なお金を少しでも守るため、この特例が適用できる場合には、お客様に寄り添い、是非お声掛けをしていきたいです。

このように消費税は、その納税義務者をめぐる判定が複雑です。上記の事例は氷山の一角です。次回以降、折を見て、他の事例もご紹介していきます。

*本連載は、毎月第4金曜日に更新を予定しております。

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