税理士のヒヤリ・ハット体験談〈第4回〉

税理士法人古田土会計 社員税理士 
土田 大輝

2020/07/24

2020年4月より始まった当コラム。経済情勢が不安定な中、少しでも実のある内容の情報をお伝えしたいと思います。このコラムのお題は「税理士業務をしている中でのヒヤリ・ハット」の共有。なかなか痛いところを探るテーマです。私は税理士法人の社員税理士として税理士業務をさせていただいているので、最終的には『代表の承認』で決定となりますが、その判断材料を代表に提供することが、ヒヤリ・ハット回避のため肝要と考えています。

本連載のまとめは こちら

第4回 給与か外注か

近年働き方が多様化し、同じ職場で働いている人も、社員・パート・アルバイトといった会社と雇用関係で結ばれている人のほか、出向や派遣、さらには業務委託等として案件ごとの限定で働くなど、実にさまざまです。

働き方の違いと会計・税務上の取扱いは税務調査でよく指摘され、特に給与か外注費かの判定が、問題になります。

【エピソード】
建設現場の一人親方は、うちの社員??

例えば、建設現場の個人外注の一人親方について、考えてみます。

建設業では、現場で働く一人親方の方と協力しながら工事を進めていくことは、業界としては当然のことですし、また気の合う仲間と仕事をすることで能率も上がるものと思います。必然的に特定の一人親方の方との仕事が多くなり、いつしか専属になることもあるでしょう。

では、これの何が税務上で問題となってくるのでしょうか。

■ 源泉所得税の徴収漏れと消費税の仕入税額控除不可のダブルパンチ
多くの場合、個人外注の一人親方とは、会社は外注(請負契約)として契約します。

なぜなら、外注なら①源泉所得税を徴収する必要がなく、②その外注費から消費税の控除をすることができるからです。

これが、税務調査で否認され給与(発注側の会社との雇用契約)とみなされた場合は、①②がそれぞれ否認されるダブルパンチとなってしまいます。

なお、これら①②は、相手方の一人親方側の取扱いにも連動するため、会社だけの問題ではありません。

■ 給与と外注との判断基準
では、これらに判断基準はあるのでしょうか。

消費税の通達には、あいまいな場合は例えば次の4つを総合的な判断材料とする旨、示されています。

(1) 役務の内容が、他人の代替を容れるかどうか。
(2) 発注者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) 引渡し未了品が不可抗力のため滅失した場合等においても、既に提供した役務の報酬の請求をすることができるかどうか。
(4) 材料又は用具等を供与されているかどうか。

また、東京国税局の文書に給与所得と事業所得の区分の参考として「給与所得及び事業所得の判定検討表」があり、平成15年につくられたものですが、考え方は今に通じます。

確実な判断基準は当然なく、いくつかの要素を総合的に判断することとなります。私も過去何度も税務調査で、このテーマについてやり取りしてきました。

事実認定の領域なので、結論は簡単には見出せません。

調査では外注費として処理しているものについて、「給与ではないか」と言われるパターンがほとんどですので、建設業などのお客様の帳簿に個人への支払いがあるときには、上記の判断を念頭に入れて、業務内容や会社とのかかわり方について、事前に検討をしておくべきです。

税務調査当日に指摘されヒヤリとする前に、我々税理士と検討しておくことで、外注費を否認されないような準備ができるかもしれません。

■ 過去の経験則から、これだけは準備しておきましょう
これで確実にOKということではありませんが、我々の過去の経験則から、これだけは準備しておきましょう。

① 請求書を発行してもらう
一人親方から請求書を発行してもらいます。発注側で作ってあげるケースがありますが、これは言うまでもなくNGです。また契約書も案件ごとに締結することが、理想です。

② 仕事の裁量を与える
建築現場は工程ごとにフローが決まっています。よって一人親方に対して時間的拘束をさせることもあろうかと思います。それでも、その中でのやりくりについて、管理するのではなく、裁量をその個人に与えることが大事です。

③ 用具等の貸与の問題
こちらも、指定用具を使うなど、現場ごとに決まりごとがあると思います。その用具を使用させたとしても、すぐに給与となることはありませんが、用具レンタル代などの請求有無について、基本契約で定めておくといいでしょう。

④ 確定申告してもらう
その個人が確定申告を自らすることで、帳簿等を自分でつけるということになります。一人親方さんに確定申告を求めましょう。

⑤ 社員から外注への切替えた人は要注意!
いままで社員だった人を、いろいろな理由で、外注に切り替えられることもあると思います。その場合、タイムカードをそのまま切っていたり、有給休暇の取得があったり、毎月定額の支給など、社員の時と変わらない待遇のケースは、給与と認定されるリスクが高いです。

■ 源泉所得税と消費税は、不況時の調査項目
いま、足元の経済不安で、多くの中小企業の業績が悪化しています。赤字決算となれば、法人税は原則としてかかりません。

ただ「赤字の会社にも税務調査が入る」と言われています。これは、源泉所得税や消費税は、赤字でも誤りがあれば納税につながるからです(調査では当然法人税についても確認され、誤りがあれば欠損金の金額修正となります)。

消費税に関しては、税率が10%となったことで、修正となった場合の納税額がこれまでより多額になる傾向です。思わぬ追徴課税が起こらないように、しっかり準備しておきましょう。

今回は、「給与か外注か」という問題について注目しました。いくつかの状況・事実から、総合的に判断されることがわかりました。我々税理士は常にお客様に寄り添い、これらの状況を確認できる関係をつくることが大切だと思います。

*本連載は、毎月第4金曜日に更新を予定しております。

最上部へ