中小・中堅企業のためのSDGs入門 Vol.2

金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長
情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授 
平本 督太郎

2020/05/18

このコラムでは、SDGsビジネスの第一人者である平本督太郎先生が、国際社会の共通目標である「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」について、中小・中堅企業の入門編としての“正しい”知識をわかりやすくご説明します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.79(2020.5)に掲載されたものです。

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Vol.2 SDGsの本質:1つ目のキーワード「地球規模」

SDGs の本質を表す1つ目のキーワードは、「地球規模」です。「地球規模」とは、グローバルとローカルの両立を目指す考え方のことを指します。これまで注目されてきた「地方創生」に関連した取り組みは、身近な課題を解決することに注力するものでした。しかし、そうした取り組みは自地域の利害だけを考える傾向にあるため、自分たちも知らないうちに他地域の人々や自分の子ども・孫世代を犠牲にしてしまうことも多いのです。SDGsでは自地域だけではなくあらゆる人に役立つ取り組みへの進化が必要となります。また、ビジネスの観点から見る際には、SDGsが世界標準の価値基準と強く紐づいており、世界で大きな価値の転換が起こっていることを知っておく必要があります。

「地球規模」の取り組みを上手く展開し始めている事例として、農業を進化させた石川県のJA羽咋(はくい)の自然栽培の取り組みがあげられます。農薬や肥料を一切使わない自然栽培は、美味しいだけではなく、地球温暖化の抑制という観点から環境にも優しく、人々の健康にも良い農作物を生み出します。アレルギー等で困っている人々に注目されるのはもちろんのこと、皮も安心して食べられるため、日本の伝統的な料理方法を用いて食材を余すことなく使えば、一切フードロスを発生させない生活を送ることが出来るようになります。

自然栽培が生み出す食材は、これまでの大量生産大量消費を是とする仕組みでは成り立ちません。そのため、逆に世界的にも希少性が高くなり、環境や食の安全性への意識が高い世界の富裕層に高く評価をされています。例えば、自然栽培で作った干しブドウの適正価格を地元の道の駅で評価した場合と海外の富裕層向けの製品販売をしているマーケッターが評価した場合では、6~10倍の価格差が生じます。世界標準の価値基準を知り取り入れることで自然栽培に取り組む農家の生産性は高くなります。こうした動きについては、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、インバウンド需要がなくなる一方で、世界中の人々の健康に対する意識は急速に高まるため、今後も大きな方向性は変わらないと言えるでしょう。

今後、急速な人口減少が見込まれる日本では、これまで正しいとされてきた大量生産大量消費モデルは成り立たなくなっていきます。他方で、JA羽咋(はくい)のように「地方創生」を超え、人間や自然の本来の在り方を追求することで身近な取り組みを進化させた「地球規模」の取り組みが、日本の地方にはたくさん眠っています。今までの当たり前を疑い、人類全体にとって本当に価値が高いことは何かを考え、地域資源を再評価する、それがSDGsに踏み出す第一歩なのです。

*本連載は、毎月第3月曜日に更新を予定しております。

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